アデル、ブルーは熱い色

 


あまりにも胸が締め付けられる映画だったので書き残しておこうと思う。

 

 

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映画『アデル、ブルーは熱い色』公式サイト

 

ジャニーズWEST炎の転校生を見るためにNetflixに入った。炎の転校生は一挙配信だったため2日で見終わってしまい、せっかくだから何か映画を見ようと思い先日、「Handsome Devil」という映画を見た。2人のゲイの男子高校生が周りの人たちとどう向き合って生きていくかというストーリーで、全体的にすごく爽やかな、そして胸が晴れ渡るような前向きなラストだった。

 

 

Handsome Devilを見てからオススメに同性愛をテーマに扱った映画が出てくるようになった。その中に出てきた「アデル、ブルーは熱い色」のタイトルのオシャレさ、あらすじの「運命」という言葉に惹かれ、何となく見始めた。

 

 


あらすじ

運命の相手は、ひと目でわかる──それは本当だった。高校生のアデルは、道ですれ違ったブルーの髪の女に、一瞬で心を奪われる。夢に見るほど彼女を追い求めていたその時、偶然バーでの再会を果たす。彼女の名はエマ、画家を志す美学生。アデルはエマのミステリアスな雰囲気と、豊かな知性と感性に魅了される。やがて初めて知った愛の歓びに、身も心も一途にのめり込んで行くアデル。数年後、教師になる夢を叶えたアデルは、画家になったエマのモデルをつとめながら彼女と暮らし、幸せな日々を送っていた。ところが、エマが絵の披露をかねて友人たちを招いたパーティの後、急に彼女の態度が変わってしまう。淋しさに耐えかねたアデルは、愚かな行動に出てしまうのだが──。


主人公のアデルは、自分に好意を寄せている先輩との待ち合わせに行く途中、信号の向こうで青い髪の女性、後のエマを見つける。見つけた瞬間、視線が囚われたように動かせない。口が半開きになったままのアデル、ハッとして視線を彷徨わせるも、何度も見てしまう。エマから目が離せない。

 

信号が変わる、動き出す、すれ違う瞬間目が合う、振り向く、エマも振り向いている、微笑むような、探るような視線、立ち尽くして動けないアデル。


この一連のシーン形容するのも勿体ないぐらい美しく、紛れもない運命を予感させる。後にエマだと分かるその青い髪の女性の艶やかな視線がもうたまらなくて、ストレートの私でもドキっというか、ヒヤっとしてしまう。2人の目が合った瞬間、青いイナズマが見えた気がした。

 

絶対にまた会う。これが運命。

 

一切言葉を交わすことなく表情だけで進んでいくシーン。アデルの戸惑ったような、苦しそうな、でも一瞬で恋に落ちてしまったんだなと思わせる表情。こっちまで息ができなくなった。開始数分で、何となくで見るんじゃなかったと思った。正直言うとここだけ何度も繰り返し見た。

 

LGBTが集まるゲイバーで再会を果たし、探り探りで会話をしていく2人。このゲイバーには偶然入ったと主張するアデルに、エマはこの世に偶然なんてないと笑う。このへんのエマのクスクス笑う表情がいちいち心臓に突き刺さる。この再会から転がり落ちるように急速に恋に落ちていく2人。またベッドシーンもリアルで、エロというより官能的。エマとアデルの曲線美が交ざりあって昇っていく様があまりにも熱く、官能的で1つの芸術を見ているようだった。強烈な青の熱さが直接伝わってきた。

 

芸術家のエマと文系学生のアデルは、育ってきた環境も性格も違う。アデルがエマの家に行ったとき、2人が恋人同士であることについてエマの両親は何も言わなかった。対してアデルの家では、友達としてしか解釈されなかったことに加えて、アデルの父親はエマが芸術家であることを遠回しに批判したりした。ここから価値観の違いが積み重なっていく。

 

アデルがエマに対して抱いているのは恋愛感情というより憧れ。何者にもなれず何者かになる勇気もない平凡な自分が、エマといると何かになれるような気がする。投影することで安心を得る反面、アデルはエマに依存していく。

 

この映画はアデルの泣くシーンが多い。人目もはばからず鼻水も涙も拭かず子供のように泣く。息が上手くできなくなるほど泣く。静かに1人で泣く。本当に涙が止まらなくなった時の嗚咽と息遣いが再現されていて思わず感情移入して泣いたりした。

 

関係を修復することの難しさ、お互いが最高の人だと分かっていても絶対にできないこと。最初の鮮やかな邂逅、愛しているのに伝わらないもどかしさ、最後のどうしようもない切なさ、何度も心臓が抉られた。


普通の、どこにでもいる恋人同士の映画のようだった。愛は性別を超えるとは言うが、途中で同性愛の映画だということを忘れてしまうぐらいだった。お互いに残された爪痕の大きさがしんどい。

 

映画は表情のアップが多く、心理描写はほとんど顔。視線の彷徨わせ方が特にリアル。エマとアデルが2人でベンチに座っているシーンも愛くるしくて甘酸っぱくてお気に入りだけど、アデルが1人ベンチに寝転ぶシーンが哀しくて、でも綺麗だった。同じ場所でもこんなに違う感情が植え付けられるのかと、また映画の魅力を思い知らされた。

 

この映画、約3時間と長めではあるんですけど、最初の交差点のシーンまで見てください。そこで心臓を掴まれたら見るべきです。特に好きなのはエマとアデルの喫茶店シーンなんですけど、この時のエマのセリフがこの映画のやり切れなさを100000000000000倍増しにしてるので最後までぜひ見てほしいです。

 

 

炎の転校生を15周してしまい最近Netflix放置気味のオタクの皆さん、ぜひ「アデル、ブルーは熱い色」を見てはいかがでしょうか。